ブッチャーズ吉村が死んだ。

最初に言っておくが、正直ほとんど思い入れは無い。けど、思いの外ショックだった。
理由はいくつかある。来月ライブを観るはずだったこと。その予習の為に、久しぶりに聴いた曲がなかなかカッコよかったこと。そして、ひさ子のことを考えてしまうこと。


ブッチャーズを最初に意識したのはいつだろうか。たぶんナンバーガールの解散ライブでの向井のMCか、1枚目の『極東最前線』のどっちかだと思う。どちらにせよ、初めて聴いた曲が『さよなら文鳥』なのは間違いない。

当時のおれの好みとは全然合わない曲調だったが不思議と心に残った。良さはよく分からなかったけど、「こいつらのことは覚えておいた方がいい」と思った。その後は、良い評判は聞くものの特に聴くことはなく、いつの間にかひさ子が加入。そして、結婚していたことを知った。結婚していることを教えてくれた友だちが、「吉村は幸せな結婚生活を送ると良い曲を書けなくなる。幸せになってほしいけど、幸せにはなってほしくない」と言っていたのが印象的だった。


ひさ子加入をきっかけにアルバムを3枚くらい借りた。が、ほとんど聴いていない。どころか、1曲も憶えていない。その頃には、すっかり音楽熱が冷め切っていたので「どんなものかちょっと聴いてやるか」くらいにしか思っていなかったんだろう。


そして先週。『やついいちろうフェス』にブッチャーズが出ることを知り、少し考えた後、チケットを買った。ひさ子がギターを弾く姿を観たかったからだ。

おれはひさ子がギターを弾く姿を観たことがない。何と言うか、そのとき初めて「おれはひさ子を観たことがない」ということに気が付いた。そして、観たくてたまらなくなった。でも、たぶん来月には観れない。
どうして今まで観に行かなかったんだろう?これまでだって後悔したことがたくさんあったはずなのに。


清志郎の追悼コンサートで矢野顕子が「バカヤロー!生きてるうちに聴きに来い!」と叫んだと何かで読んだ。あまり良く覚えていないから他の誰かだったかも知れないし、もしかしたらそんなことは無かったのかも知れない。けど、そんなことはどうでもいい。
どうしてか、「生きてるうちに聴きに来い!」という言葉におれは「ホントそうだよな」と思った。

それでどうしたか?

おれは何もしなかった。「ホントそうだよな」と思ったのに、おれは何もしなかった。
そして、ゆらゆら帝国が解散した。観に行かなかったことを後悔した。
何度目の後悔だろう?でも、本質的には何も変わっていない。

今回のことだってそうだ。たぶん、これからもおれは変わらないと思う。

何が言いたいのか?

そんなものは何もない。ただ、何となく思ったことを書きたくなっただけだ。
故人を偲ぶ気持ちはある。それでいいじゃないか。